2005年12月18日

「愛の渇き」 三島由紀夫

 城はここから見ると確乎とした土の上に建てられたものとは見えない。それはむしろ、泛んでいる。浮遊している。空気が澄んで来ると、城の実体から城の精神のようなものが抜け出して、背のびをして、その高みから四方を見まわしている姿が、遠くからも見えるのではないかと思われる。大阪城の天守閣は、悦子の目に、漂流者が幾たびとなくその目をあざむかれる幻の島影のように見える。
posted by ヒメスケ at 00:01| 三島由紀夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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